雑文

新村出の掌に踊れ

2017年3月3日

先日、NHKの「探検バクモン」という番組を久しぶりに見ました。テーマは「辞書」。日本を代表する(と言ってしまっても差し支えないでしょう)辞書である広辞苑の改訂について、掲載する言葉の取捨選択から紙の厚み(!)に至るまで実に細やかに神経の張り巡らされているさまを明らかにして行くという、興味深い内容でした。

広辞苑、もはやぼくにとってはノスタルジアさえ感じさせるコトバです。そういえば遠い昔、本棚に置いてたよなぁ…なんて思ってそこら辺をあさったら、出てきました!

第三版ですね。昭和60年前後に購入したもののようです。帯も破れて、大分年季が入っていますな。値段も安い!まだ消費税を知らなかった頃の値段です(現在売られている第六版は税込み8,640円)。

そしてなんとなく思い出しました。これまた遠い昔、広辞苑をネタにして某SNSで乱文を書き散らしていました。探し出して読み返してみたら、何とも肩に力の入った文章。あの頃ワタシは若かった…。(^_^;; そしてたかが単語一つ辞書を引いただけで1600字以上書いてしまう馬鹿さ加減が笑えます。なので、多分十数年ぶり?に晒してみようと思います。暇でヒマで死んでしまいそうな方はどうぞ。

====以下引用====

 ひょんなきっかけから「おつとめ品」というコトバを知ってしまった僕ではあったが、次に突き当たった疑問は、「じゃぁ『おつとめ品』って、漢字だとどう書くのさ?」だった。一口に「つとめる」と言っても、「勤める」「務める」「努める」「勉める」…と、たちどころに数あまたの「つとむ君」たちが名乗りをあげる。同音異義語は大好きだ。ところで山口さんちのツトムくんはどれだ?

 閑話休題、「おつとめ品」の「おつとめ」とは何か。商品が自分の本分をわきまえ、終生お店のために働きます、勤め帰りのおとーさん、あなたと同じくらい疲弊してるお財布さんのためにも安くなりましたよー、の「お勤め」だろうか?それとも商品が自らに課せられた使命を認識し、賞味期限が切れる最後の一秒まで忠実にその任務を遂行する「お務め」か。あるいは商品がねぇねぇお兄さん寄ってらっしゃいなお安くしとくからさぁと江戸時代の遊郭さながらに客引きにこれ努めるがゆえの「努める」なのか。いやいやお客さんまぁみたってぇな勉強しますさかい(似非関西弁)と商品が雄弁に物語る「勉める」か。。。ここでも僕の悩みは深い。

 そこで僕はふと思った。原点に帰れ、と。IT化が叫ばれてやまぬ昨今、何かといえばインターネットに頼り、ワープロ漬けで書けなくなってしまった漢字をテキストエディタに打ち込んで確認したりと、まぁパソコンに毒され尽くした(そんな表現あるのか?)僕ではあるが、今こそ書籍に解を求めるべきではないかと。僕は迷うことなく、本棚の隅でもう10年以上は確実に開いていないであろう広辞苑を引っ張り出した。お願い!新村出。

 へ、へ、へっくしょい!ハウスダストアレルギーの気が微妙にある僕の鼻に、広辞苑の上に10年以上にわたって降り積もったホコリは辛い。やっとの思いでケースから広辞苑を取り出した。さては新村出の呪いか。ずずず。

 と、懐かしい紙の香りが鼻をつく。これこれ。一分の隙もなくみっしりと紙の詰まった稠密感は、それを手に取った者を恍惚の境地へといざなう。ほとんど変態だ。ほっといてくれ。ふんっ。

 何の話だ。そうだ「おつとめ品」だ。僕はページの端っこに記された見出しを注意深く観察しながら、目指すページへと近づいてゆく。最初に開いたページにあったのは「おもいて」。それよりは前だな。ページをめくる。「おへや」「おとり」…おぉ、だんだん近くなってきた。「おつはい」…つい本文に目を走らせてしまったのは内緒だ。

 ともあれ、まさにその1ページ前に、目的の「おつとめ品」はあった。「おつとめ」の語に付随するようにして。以下引用する。

-・ひん【御勤品】特別に安いねだんで客に奉仕する商品。サービス品。

 そうか、おつとめ品は御勤品であったのだ。これだから広辞苑はやめられない。ここ十数年見てなかったくせに。

 かくして、やはり広辞苑を編んだ新村出は偉大である、ということに落ち着いた。でかしたぞ新村出。呼び捨てにしていいのか。

 しかし油断してはならない。新村出は、いろいろなところに罠を仕掛け、僕たちを陥れようとしているのだ。

 たとえばさっきの「おつとめ」の隣に「おっとり」という項目があり、その説明にはこうある。
「こせつかないで、ゆったりしているさま。」

 こせつかないって、何だろ?と思い、そのページを目指す。あった。「こせつく」という項目が。その項目にいわく、
「こせこせする」

 まぁ予測された答えではある。で、「こせこせ」にあたってみる。
「態度のおおようでないさま。」

 じゃぁ「おおよう」って何さ?すぐに見つかった。
「ゆったりと落着きがあって、こせこせしないさま。」

 …無限ループに陥ってしまった。こせこせ=おおようでない、おおよう=こせこせしない、である。かくして、かわいそうな広辞苑ジャンキーは新村出が自在に描き出す言葉の迷宮に手もなく引き込まれて行くのだった。恐るべし、新村出。

 何だか話が四方八方に発散してしまったが、いったい何が言いたかったのかというと、「おつとめ品は御勤品でした。」ということだ。句読点込みでたった13字で済むじゃないか。ここまでいったい何文字書いてるんだよ。

====引用終わり====

 

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