今シーズンは、これまで以上にワクワクドキドキなシーズンになりそうです!
去る3月28日、バーレーンのインターナショナルサーキットで今季の嚆矢となるバーレーンGP決勝が行われました。見事優勝を飾ったのはディフェンディングチャンピオンのメルセデスのルイス・ハミルトン選手。われらがレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手はわずかに及ばず2位、メルセデスのバルテリ・ボッタス選手がそれに次ぐ3位を獲得。ファステストラップはボッタス選手が獲得しました。そしてこれまたわれらがアルファタウリ・ホンダの角田裕毅選手は9位入賞!デビュー戦でポイント獲得を果たしました。
フォーメーションラップから大波乱!荒れる開幕戦決勝スタート。
この決勝戦、のっけから波乱の連続、荒れる開幕戦という印象をより強くさせるものでした。その先陣を切ってしまったのはわれらがレッドブルのセルジオ・ペレス選手。なんとフォーメーションラップ中に突然のエンジンストップ、いやそれどころじゃなく全電源シャットダウン!なすすべもなくコース上に立往生するRB16B…。こりゃだめかと思った刹那、ペレス選手は冷静にいったんステアリングを脱着してシステム再起動、なんとマシンは息を吹き返します。九死に一生を得たペレス選手、しかし当然ながら予選順位11番グリッドからのスタートはかなわず、ピットレーンからのスタートを余儀なくされます。また、レース全体としても2回目のフォーメーションラップを行い、周回数は1周減算の56周で争われることになりました。
かくしてスターティンググリッドに19台が整列しての再スタート、ポールポジションのフェルスタッペン選手は確実にトップをキープします。そして上位陣では早速フェラーリのシャルル・ルクレール選手がソフトタイヤのグリップを利してボッタス選手の前に出ます。そして隊列が整えられようとするその瞬間、ハース・フェラーリの新人ニキータ・マゼピン選手がコースアウト!いきなりセーフティカーが導入されます。開幕前から何かとお騒がせなマゼピン選手、またしても世間をざわつかせる結果となってしまいました。関係ないですが、今季登場したアストンマーティンのセーフティカー、カッコいいな。ピットスタートのペレス選手はここでいきなりピットイン、タイヤ交換を行いました。
セーフティカーはマシンの回収とともにコース外へと去り、4周目から再スタート。トップのフェルスタッペン選手は確実に首位を守りますが、またしてもアクシデント発生。5番グリッドからのスタートを決めていたアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリー選手がマクラーレン・メルセデス勢とのつばぜり合いで接触、フロントウイングにダメージを受けてしまいました。また後方では、ハースのミック・シューマッハ選手がスピン。しかし無事にコースに戻ってレースを続行します。このとき、短時間ですがバーチャルセーフティカーが発動されました。
なんとも目まぐるしいレースは5周目から再開。DRSも使えるようになり、隊列はフェルスタッペン選手、ハミルトン選手、ルクレール選手がトップ3を形成します。しかし6周目にボッタス選手がルクレール選手を早々とオーバーテイク。レッドブル1台+メルセデス2台という、過去何度も見たことのある上位集団がこの後のレースを支配することになります。そして後方では、このままじゃ終われないペレス選手が猛チャージ。7周目には14位、10周目には12位と着実に順位を上げ、ポイント圏内を目指します。
タイヤ選択の妙。王者ハミルトン選手が首位奪取。
今回のレースでは、タイヤ交換は2回というのが穏当な作戦となりました。12周目あたりから、ソフトタイヤ勢が1回目のピットストップを行っていきますが、14周目にハミルトン選手がミディアムタイヤ勢の先陣を切ってピットイン、ハードタイヤへと履き替えます。ハミルトン選手は新品のハードタイヤを2セット持っており、これでレース終了までをつなぐ考え。一方首位を走るフェルスタッペン選手は、ハードタイヤを1セットしか持っておらず、ミディアムタイヤをもう1度装着する必要があるため、ハミルトン選手に付き合っておいそれとピットインすることができません。結局フェルスタッペン選手は18周目にピットイン、ミディアムタイヤを履くことになるのですが、この時点でハミルトン選手がトップに立ち、みごとアンダーカットを成功させる形となりました。僚友ボッタス選手も17周目にハードタイヤに履き替え、ハミルトン選手-フェルスタッペン選手-ボッタス選手の順でレースは展開して行きます。
一方、見どころは先頭争い以外にも。ホンダ勢2台のオーバーテイク大会です。スタート時、慎重になり過ぎたか17位まで順位を落とした角田選手でしたが、アストンマーティンのセバスチャン・ベッテル選手やアルピーヌのフェルナンド・アロンソ選手といったワールドチャンピオン経験者と互角以上にわたり合い、次々と順位を上げて行きます。また、フォーメーションラップで躓いたペレス選手もさすがのレース巧者ぶりを発揮、ポイント圏内にまで戻ってきました。ペレス選手、昨シーズンはこのサーキットの外周コースを使ったサクヒールGPで最後尾から優勝するという離れ業を演じていますが、いったい相性がいいんだか悪いんだかよくわかりません。
手に汗にぎるドッグファイト、そして…。
やがて、メイン集団の2回目のピットストップが始まります。そこでトラブルに見舞われてしまったのがボッタス選手。右フロントのタイヤが外れず、10秒あまりのタイムを消費してしまいます。だいたい2秒台の静止時間がトップクラスのタイヤ交換時間、これでボッタス選手はほぼ先頭争いの対象から外れてしまいました。
また、34周目には戻ってきたワールドチャンピオン、アロンソ選手がピットイン、そのままリタイアとなってしまいました。後から伝えられたところによると、ブレーキダクトにサンドイッチの包み紙が入り込んでオーバーヒートを起こしたとの由。残念ながら復帰初戦を飾ることはできませんでした。その一方角田選手もピットインでハードタイヤを装着。13位で戦列に復帰して上位を狙います。
そう、ここから印象的なドライビングを披露したのが角田選手。元ワールドチャンピオンのベッテル選手、ウイリアムズ・メルセデスのジョージ・ラッセル選手、これまた元ワールドチャンピオンのアルファロメオのキミ・ライコネン選手を次々にオーバーテイク、入賞圏内に上昇して見せます。今季のF1、一瞬たりとも見逃せないと思わせる一瞬です。
そして真打、レッドブルのペレス選手が39周目でミディアムタイヤに、フェルスタッペン選手が40周目にハードタイヤに履き替えてそれぞれ8位、2位でコース復帰。さらなる上位を狙います。44周目にはペレス選手がリカルド選手をオーバーテイク、6位に浮上します。さすがレース巧者。フェルスタッペン選手は1周あたり約1秒速いタイムを連発しながらハミルトン選手を追い上げます。
レース最終盤の53周目、ついにフェルスタッペン選手がハミルトン選手をとらえます。しかしそれがコースを外れての追い抜きだと判断され、フェルスタッペン選手はいったんペースを落としてハミルトン選手に首位の座を譲ります。これが万事休す。フェルスタッペン選手にハミルトン選手をオーバーテイクする力は残っておらず、ハミルトン選手がトップでチェッカーフラグを受けることとなりました。フェルスタッペン選手は僅差の2位、ボッタス選手が3位に入りました。
一方、角田選手は最終周でアストンマーティンのランス・ストロール選手を見事にオーバーテイク!9位でチェッカーフラグを受け、F1参戦の日本人選手のなかで最初のデビュー戦ポイント獲得を果たしました。素晴らしい!
というわけで、ホンダ勢の開幕戦優勝はなりませんでしたが、今回のフェルスタッペン選手とハミルトン選手との争いは、今後のシーズンに期待を抱かせるに十分なものでした。これから全23戦、史上最多のレースが続きます。がんばれレッドブル・ホンダ!そしてアルファタウリ・ホンダ!